テロのリスクを正確に算定する必要性

  • 2016/7/11
イスタンブール テロ

先日、イスタンブールのアタチュルク国際空港でテロ事件が起こりました。犠牲になった方、被害にあわれた方のご冥福をお祈りいたします。

海外旅行のリスクとその確率

海外旅行にはどうしてもさまざまなリスクがともないます。テロはその一つだということを今回の事件でも痛感させられました。しかし、一旅行者がテロについて考えるときに必ず考えなければならないことがあります。それは確率です。

今回テロ事件が起きたアタチュルク国際空港は年間の利用客数は、6184万人(2015年)。日本の総人口のおよそ半分となります。ただし、通常旅行者は行きと帰り2回同じ空港を利用することになります。そのため、利用客数を2で割ります。

今回のテロに遭遇し、犠牲になった可能性を過去1年間の全空港利用客で割ると、41/30920000=0.00013260025%となります。

これを2015年におきた水難事故とくらべてみましょう。この年の水難事故の犠牲者は791名。分母は日本の人口と仮定します(実際には海や川に1回も行かなかった人もいれば、何度も行った人もいると思いますがここでは1人1回出かけたと仮定します)。その場合、791/127000000=0.00062283464%となります。上の数字とくらべると4.7倍高いことになります。

つまり、暫定的な計算ではありますが、現状でイスタンブールの空港でテロにあう可能性よりも、日本国内で海などに行って水難事故で犠牲となる可能性のほうがはるかに高いことになります。

イスタンブール

<イスタンブールの旧市街。国際的な大観光地だけにテロ事件のインパクトは大きい>

もちろん、この計算ではテロはほぼ不可避なのに対して、水難事故は自分で注意すればかなり防げるという点は捨象されています。また、私はイスタンブールに行くことが安全ですともいうことはできません。ただし、もし私たちがテロの危険を強く感じるのであれば、水難事故に巻き込まれるリスクもそれと同様かそれ以上に注意しなくてはならないとはいえると思います。

水難事故や交通事故はもちろん海外でも数多くあります。しかし、これらのほとんどは1回あたりの事故の規模が小さいこともあり、あまり報道されないか、場合によってはまったく報道されません。しかし、事故の規模や報道の扱いの規模と、私たち旅行者にとってのリスクは必ずしも結びつきません。

海外旅行をするうえでは、感覚ではなく、データにもとづき、理性的に安全性を判断することが求められているといえます。幸いさまざまなデータはネットで誰でも気軽に集めることができる時代になっています。

テロに巻き込まれないための対策

最後にテロに巻き込まれないようにするための方法について。アタチュルク国際空港は私も何度も利用していますが、空港のセキュリティは一定レベルに達していたと思います。しかし、空港の建物に近づくことに関してはほぼノーチェックの状態でした。かつてはハイジャックを防止することがテロ対策の大きな目的でしたが、無差別な殺傷をめざすのであれば、どんなに空港内のセキュリティのレベルを上げても事実上意味をなしません。

私たちがとるべき対策は2つだけです。1つは空港の滞在時間をできるだけ短くするということもう1つは空港内にいるときもできるだけ人口密度の高いところにはいないように心がけることです

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橋賀秀紀

橋賀秀紀トラベルジャーナリスト

投稿者プロフィール

筑波学院大学非常勤講師。東京都生まれ。著書は『エアライン戦争』(宝島社)など。渡航国数107か国。海外渡航暦は200回以上。記事内容・取材依頼についてはhashigahideki@gmail.comまで。

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